1990年代後半の文献に「P209系」という言葉が出てきます。この形式が指す先が十分に見えていないので、情報収集も兼ねて資料をご紹介致します。
元資料について
1997年の鉄道サイバネシンポジウム講演論文集に、JR東日本、日立製作所による「ベクトル制御を応用した2レベルインバータ JR東日本P209系電車用IGBTインバータの開発」という記事があります。
記事の内容は、209系ウラ57編成新製時に、IGBT素子のVVVFインバータを搭載して試験を行った、という内容です。
当時の背景
京浜東北線への209系新製投入が続く中、1996年9月に新津車両製作所でウラ57編成8両が新製されました(6ドア車組み込みで捻出されたT車を後日組込み)。元資料によれば、1996年11月から12月にかけて、東北本線、京浜東北線で走行試験を行ったようです。
当時、209系950番台(後のE231系900番台)の新製が1998年10月に迫っており、同編成からIGBT素子のVVVFインバータが搭載されたこと、同編成の日立製VVVFと外観が酷似していることから、209系950番台に搭載するVVVFインバータの試験を行ったと推測されます。
TLで誰か(忘れてしまい今調べても出てきません)がウラ57編成のVVVFを見たいと言っていたので…。日立製2レベルIGBT素子で、209系950番台に搭載されるSC59の試作品だったのではと思います。
三菱製と1台ずつ搭載したのでは思いますが、資料が見つかりません。 pic.twitter.com/x9FVunHf6N— 在宅鉄いちさと (@ichisato45tx) January 23, 2021
P209系とは?
P209系が指すものについて、元資料には「通勤電車用次期駆動システムとして、P209系通勤電車向けに3.3 kVIGBTを応用したインバータシステムを開発した」との記述があります。更に、元資料ウラ57編成の写真には「P209系通勤電車」とのキャプションがあり、本文をそのまま読むと「P209系」はウラ57編成を指していることになります。
とはいえ、ウラ57編成が新製された時点で、209系950番台の登場まで2年を切っているわけで、P209系、すなわち「ポスト209系」として、当時一番妥当なのは209系950番台だったのではと思います。この辺の用語が何を指していたのか、他の資料をご存知の方はコメント欄でご教示頂けると幸いです。
なお、その1年後、1998年当時の新津の工程表では、209系500番台は「改良209系」、209系950番台は「新209系」となっています。
E217系新津ノックダウンのソースをご紹介します。「雪化粧した車両は、白無垢を着て嫁に行くかわいい娘のようでもあり、また白装束をまとった戦地に赴く頼もしい息子のようでもあり感慨深いものであった。ものづくりの難しさと奥の深さそしてその喜びを感じた瞬間でもあった。」
それから22年…。 pic.twitter.com/gFyL0QAKkm— 在宅鉄いちさと (@ichisato45tx) September 27, 2020
三菱製VVVFは?
ご存知の通り、209系950番台は、三菱製、日立製のVVVFを1台ずつ搭載していました。今回、日立の文献しか見つかっていませんが、三菱も試験をしていた可能性があります。また、日立製を含め、試験も12月で終わったとは限らず、長期試験に供するケースもあり、搭載期間に関する情報も不明です。この辺も、ご存知の方がいらっしゃいましたら、ご教示頂けると幸いです。
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