JR西日本は車両更新工事において、「体質改善工事」と「リニューアル工事」という2つの種類が存在します。
「体質改善工事」は旧国鉄から継承した115系などのほか、221系や207系でも実施されています。
体質改善工事(221系)
出入口付近のスペース拡大と車端部を除く4箇所に折畳式補助席設置
トイレ設備を車イス対応の大型トイレに変更、車イススペース設置(Tc)、車内案内表示器取付、排障器(スカート)を新型の強化型に、前照灯HID化
体質改善工事(207系)
客室証明LED化、先頭車に車イススペース新設、前照灯HID化(のちにLED化に変更)、VVVF機器更新、先頭部デザイン変更、オフセット衝突対策、行先表示器更新、座席部縦手すり・仕切り板新設、ドア閉時、案内音声新設など
一方で、キハ120形や223系では「リニューアル工事」の呼称が用いられており、JR編成表では混同することなく、それぞれは明確に使い分けられています。
リニューアル工事(223系)
前照灯・室内灯LED化、トイレを車イス対応大型化、吊手大型化、握り棒の色調変更、腰掛改良、固定腰掛取替、電子機器更新、行先表示器・種別表示器をフルカラーLEDに取替、冷房ダクト整備、車側表示灯の大型化、前面下部オオイ強化など
混同されがちな2種類の更新工事は、何が違うのでしょうか。
参考資料:JR電車編成表2024夏より
コメント
「JRW Innovation Platform」公式サイトによると、「体質改善工事」は「既存の鉄道車両の車内設備を、新車と同等の水準までレベルアップすること」、一方「リニューアル工事」は「古くなって魅力が薄れてしまった鉄道車両の魅力を回復する事」に主眼が置かれているようです。しかしながら、2013年1月8日付けのJR西公式プレスでは221系についても「リニューアルを行う」とあるほか、キハ120形に至っては公式・非公式問わず混同されているようでもあります。
もしかすると実質的には同じ内容ではあり、世代によって区別しているのかもしれません(221系、207系は民営化後新登場の車両としては第1世代に当たると言えますし)。
「どれだけ当時の新車のアコモデーションに近付けられるか」がカギになると思われます。線引きはかなり曖昧ですが…
グッドデザイン賞受賞ページに「この『リニューアル』とは、経年に対する機能回復だけではなく現代のニーズに見合った車両へ生まれ変わらせるリノベーション(体質改善)です。」「JR西日本では、車両経年に応じて時代に見合った車両へ生まれ変わらせる体質改善を実施しています。新製車両と同じ安全性と快適性を追求することで、JR西日本の車両ブランドの統一を図っています。」と書いており、体質改善工事では新車に近付けることが重要視されていることがわかります。
https://www.g-mark.org/gallery/winners/9dad1151-803d-11ed-af7e-0242ac130002
対してリニューアル工事では、そこまで「新車と同等」に拘らず、既存の設備も活かす印象です。
例えば223系1000番台は床材はそのままですし、キハ120は座席配置が変更されていません(座席そのものは323系に近い物に交換)。
ただし、223系0番台は床材等の交換や車椅子スペースの設置·追設や一部座席交換等大掛かりな改造が行われたにも関わらず「リニューアル工事」扱いです。トイレと袖仕切以外同等の改造を行った207系は「体質改善工事」扱いなのに…