2024年度より高崎車両センター211系に対して延命化工事が行われることが明らかとなりました。内容は「ベンチーレーターの撤去」や「幕板を貼る工事」となり、分かる範囲では雨漏り対策などといった、リニューアルとは程遠い、必要最低限の延命措置と感じられます。
実は、過去に211系をVVVF化して新潟地区に転用して115系を一部置き換える計画があったようです。
211系の「新車化」
リークサイトとしてかつて有名だった国電総研さんのサイトには次のような記述があります。
新津車両製作所では新潟地区115系置換え用E129系を2011年に44輌(2連×22本)程度製造する予定の様であるが、収支状況の変化により、その後予定されている4連については計画を見直し、211系をVVVF化改造の上、充当する計画もある様だ。
国電総研スペシャル2010 - http://www5.airnet.ne.jp/kokuden/soukensp2010.html
後の2012年に労働組合資料(フォーラム)にて、2009年12月改定のベスプラでこの情報の一部は裏付けられることになります。
この労働組合資料には「2013年度から211系新車化転用によって115系を一部置き換え」や、「2014年度からE129系(新造)によって115系を置き換え」といった記述がありました。
実際には、E129系2両編成は2014年度から、4両編成は2015年度から導入されていますが、211系が4連化及びVVVF化改造の上、新潟に転入されることはありませんでした。
211系の転用計画が凍結された理由としては、①2012年の年末にはリーマンショックから景気が回復していること、②新津車両製作所(当時は分社化前)の稼働率を高めるため、と推察されているようです。
新車化
さて、先ほど「新車化」という見慣れない単語が出来てきました。これについては、2017年に「リニューアル保全化(新車化)」という単語が出てきており、内容は未定・検討中としているものの、「機器更新+リニューアル」という考え方がしっくりくるように思えます。
転用対象だった編成は?
実際に、2011年から2012年にかけて、検査を実施した付属編成13編成が4両編成に短縮(元14号車のサハ211形が廃車し、2M2Tを構成)され、各地に疎開されることになりますが、いずれも2013年に長野で全てが解体されることになります。
なお、チタN53編成は検査を実施し2013年2月に長野に配給されましたが、疎開されることなく、同年中に編成単位で除籍されています(サハ211-2003のみ3月中に解体され、他4両は7月に解体)。
疎開されていた211系の解体が進む中、7月2日、E129系160両(2両編成30本、4両編成25本)を導入すると発表しました。
わざわざ検査を施し、4両編成を組成して疎開させるも数年後に廃車される、というのは不自然な話で、何らかの転用計画があり、それが見直された(計画の凍結や見直しなど)と考えるのが自然です。
そのため、チタN51編成~チタN64編成を4両編成化とVVVF化などを施工して、新潟へ転用させる計画だったのではないかと考えられます。
〈2024/02/25 追記〉
豊野駅に疎開していた、211系N54編成です。
検査を受けたままの状態ですが、その後長野に入場後、廃車解体されることになります。
コメント
211系はVVVF化したら三菱SiCになるでしょうか。長野地区はE131系に置き換えられるでしょうか。
もし新潟に行く話が最初から無ければ、宇都宮線の黒磯口や日光線への205系投入も変わっていたのかなと感じます
仰る通り、元々205系は211系だけでは不足する日光線のみに転用される見込みで、新潟は史実の通り全て新車(=E129系)、宇都宮線黒磯口・高崎・長野(豊田)を211系で統一するような計画だったと見られています。
新潟転用の話がなければ田町の付属編成は高崎か小山に配置されて4連で走っていたと見られ、田町付属側の視点で結果論を言えば、活躍し続けられる見込みだったところに余計なことをされてしまったとも言えます。
211系のVVVF化に関しては、新潟地区への転用が予定されていた4連とは別に、3000番代の一部で2連化を伴う転用改造が計画されていたという噂やそれを裏付ける現車の動向があったようですが、それらはどこへ転用される予定であったのかという点や、その計画が実現していた場合、高崎地区にはどのような車両が投入されていたのかという点は気になるところですね。
記事にあります通り、新潟地区への転用を前提として田町(当時)の付属編成を4両に組み直して疎開させていました。
おそらく計画が変更となった理由としては、東急が5000系を導入した時と同じ理由、すなわち「残寿命を勘案すると大規模な更新工事を行うよりも、イニシャルコストが高くついても維持費の低減化で回収できることから、新製した方が長期的に安あがり」という事が大きいと思われます。
当時を辿ってみると北陸新幹線の建設について新潟県が難色を示し、建設許可にあたり一部211系で置き換え予定だった車両を全て新車にする事も条件の一つとして、新幹線の建設許可が出たのでは推測します。
211系の車両計画変更で急遽廃車になったのはこの影響でないでしょうか。
新潟県北陸新幹線報道発表リンク
https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/koutsuseisaku/1267048918058.html
新車が新幹線建設の条件になったとはまず考えられませんが、一方で信越線の三セク移管が具現化したことにより新潟県会社(えちごトキめき鉄道)へと譲渡されることとなったE127系の穴埋めが必要となった点は車両計画の変更に影響を与えていると考えられそうです。
信濃川不正取水問題も、計画変更に至った遠因のひとつでは、と考えます。
問題の後に関係自治体が求めた「利用促進策」に対するアンサーとして解釈できそうです。