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東急2000系の機器更新と大井町線転用-②2003Fへの機器更新施工

車両動向
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本稿では3回に分けて、東急2000系の大井町線への転用と機器更新工事について考察を交えつつ解説しています。第二回は、2018年前半に機器更新1本目として出場した2003Fが見せた不可解な動きについて解説していきます。

<連載状況>
東急2000系の機器更新と大井町線転用-①概要と初期の噂
東急2000系の機器更新と大井町線転用-②2003Fへの機器更新施工(本記事)
東急2000系の機器更新と大井町線転用-③9020系化と大井町線転属完了

2003F運用離脱と長期入場

2017年3月17日、10年ぶりの田園都市線向け新型車両である2020系の導入が発表され、それに伴い2000系の大井町線転用に向けた動きが活発化しました。しかしながら、2000系は8500系や8590系といった老兵を差し置いて真っ先に運用を離脱することになり、中でも1本目の離脱となった2003Fの離脱は2018年3月の2020系営業運転開始から1年近くも前のことでした。第一回で触れたように2000系の大井町線転用は機器更新等大規模な改造を伴っていたため、早い段階で運用を離脱し改造工事に入る必要があったものと考えられます。

まずは2017年5月10日、2020系導入のニュースの影で、2003Fが長津田車両工場へ入場しました。検査周期もちょうどこの頃であり、何より2020系の投入が発表されたばかりで当然ながら代替車両の投入もまだなかったことから、当初は単なる検査入場と見る向きも少なくありませんでした。しかしながら入場は長期化し、次第に2015年の幻の甲種輸送設定以来噂されてきた機器更新工事の施工が現実味を帯びていきました。

2003F、機器更新の上で10両編成で出場

そして約1年が経った2018年3月16日終電後、サハ2両を除く8両の機器更新、ならびに10両全車の全般検査を終えた2003Fが10両編成で長津田車両工場を出場し、長津田検車区まで自力回送されました。機器更新後の出場となったためか、深夜の出場になりました。

主な更新内容は以下の通りです。

  • 主電動機、制御装置、ならびに補助電源装置の更新(制御装置は日立製GTO-VVVF→三菱製SiC-VVVF)
  • パンタ付き電動車のシングルアームパンタグラフ化・ダブルパンタ化
  • 乗務員室扉の交換
  • 内装更新(化粧板、座席モケット、床材、ならびにスタンションポールの更新)
  • 冷房装置の交換
  • 車外スピーカーの換装
  • 車端部フリースペースの設置と窓ガラスの熱線吸収ガラスへの交換

特に冷房装置は2台で1セットの外観のものが2セット搭載された特徴的な形態であったものが、4台の冷房装置を搭載する形態となり、兄弟車の9000系と近い外観となりました。また、サハ2両を除く8両に機器更新が施工された点は、第一回で触れた室内灯LED化にもとづく予想と整合的であり、大井町線への転用が確定的となりました。

日中試運転を経て2か月後には再入場

2018年3月26日からは10両編成のまま日中試運転が繰り返し実施されました。特徴的な日立製GTO-VVVFから三菱製SiC-VVVFに更新されて一気に現代的なサウンドとなった2000系が10両編成で走行するシーンは界隈に衝撃を与えましたが、結局この姿で営業運転に就くことはなく、わずか2か月後の5月には大井町線転用工事のため長津田車両工場に再入場しました。

こちらは2003Fの日中試運転の貴重な映像です。当時機器未更新のまま田園都市線にて運用中だった2001Fとの離合シーンも見られます。

東急2003F試運転を追いかけてみた 2018.03.26

2003Fは機器更新後に10両編成で営業運転に入ることが想定されていたのか?

2003Fは機器更新を施工され10両編成で試運転まで行ったものの、結局営業運転に就くことはありませんでした。ここで一つ浮かび上がる疑問は、2003Fは機器更新の上で10両編成で田園都市線での営業運転に入ることが想定されていたのか?というものです。この時の出場は更新されたデハの試運転に供するべく一時的に10両編成を組成したもので、田園都市線での営業運転に投入することは最初から想定されていなかった、という可能性もあります。しかし以下のような理由から、田園都市線での営業運転は少なくとも可能性として想定されていたと考えられます。

(1)サハ2両への全般検査施工

大井町線転用に伴い余剰となるサハ2両は機器更新・内装更新の対象外とされましたが、前述のように全般検査はサハ2両に対しても施工されていました。しかしながら、廃車前提の車両に対して試運転の伴車としての目的のみで全般検査を行うのは非効率のはずです。次回触れますが、結果的にはサハ2両は全般検査施工からわずか3か月後の2018年6月に廃車になっており、これが果たして計画的な動きであったのかは若干疑問が残ります。あまり現実的な案ではないかもしれませんが、2003Fは新造当初に東横線にてサハ2両を除く8両編成での営業運転を行っていた時期があり、8両編成での試運転も可能であったかもしれません。

ちなみに、こちらも次回簡単に触れるように、同じく大井町線所属の8500系8638Fは2018年11月に検査出場したわずか5か月後の2019年4月に運用を離脱し廃車となっていますが、これも車両のやり繰りの関係でやむを得ず廃車前提の車両に検査を施工した珍しい事例の1つに過ぎないと考えられます。いずれにせよ、2003Fのサハ2両への全般検査施工が不可解であることに変わりはないでしょう。

(2)貼り直された10両編成向けホームドア停止位置目標マーカー

前述のように2003Fでは機器更新に際して両先頭車の乗務員扉が新品に交換されていますが、乗務員扉の下部に10両編成向けのホームドア停止位置目標を示す赤色マーカーが確認されています。当然ながらこの時の出場時に新たに貼られたものですが、10両編成向けの営業運転に入る可能性がないのであれば赤色マーカーは不要のはずで、大井町線転用を見据えた試運転であるならばむしろ大井町線5両編成向けの黄色マーカーが貼られているはずです。

(3)貼り直された10両編成向け号車ステッカー

鉄道ファン2018年6月号(交友社)には2018年4月3日に行われた取材写真が掲載されていますが、内装更新車8両については車端部の号車ステッカーが新たなデザインに貼り替えられており、それらが10両編成に対応するものであることが確認できます(写真ではデハ2453に8号車のステッカーが貼られています)。10両編成で営業入りすることが想定されていないならば、10両編成に対応したステッカーにわざわざ貼り替えることはしないでしょう。

同様の事例として、5050系4000番台の一部編成は10両編成で新造されたものの一時的に8両編成で東横線での営業運転に投入されたため、8両編成では使用されない6・7号車の号車番号は目隠しされた状態で、その他の車両は8両編成向けの号車番号を掲示した状態で搬入されました。8両編成で新造されたものの当初は6両編成で運用された3020系に関しても、同様の措置が見られました。

(4)サハ2両の小規模な内装更新施工

前述のようにサハ2両については機器更新・内装更新ともに対象外とされていますが、これら2両についても側扉の黄色テープ貼付が新たに施工されているほか、ドアレールへの色付けがなされていたとの情報もあります。これらの点は試運転に供するためだけであれば不必要であり、やはりサハ2両を含む10両編成での営業投入を想定していたと考えるのが自然でしょう。

しかし疑問は残る…

しかしながら、近く大井町線への転属が確実であった2003Fのためにメトロ側での各種試験・乗務員習熟等を行うのもかなり非効率でしょうから、本当に田園都市線での営業運転に投入する計画であったのか疑問が残る部分もあり、実際にどのような計画であったのかはいまだに謎に包まれたままです。仮に営業投入が想定されていたとしても、問題がなければ営業運転に投入する計画であったのが後に変更になったという可能性が考えられる一方で、あくまで不測の事態で車両不足に陥った場合のためにスタンバイする緊急予備車のような扱いであった、という可能性もあります。なお、当初10両編成で田園都市線に復帰する予定だったものの誘導障害の関係で計画変更になったという噂もありますが、根拠となる資料が見つからなかったため今回は割愛させていただきます。

いずれにせよ、2003Fが機器更新後に10両編成で営業運転に投入されることが想定されていたとしても、あくまで暫定的なものとしてであり、近い将来大井町線へ転用される予定であることは明らかでした

今回のまとめ

ついに機器更新を受けて10両編成で出場した2003Fですが、上記のように不可解な動きを見せたのち、わずか2か月で大井町線転用工事のため長津田車両工場に再入場しました。次回は、2003Fをはじめ各編成が実際に大井町線へと転用されていった際の動向について解説していきます。

参考文献

  • 鉄道ファン2018年6月号(交友社)、2018年5月21日
  • 東京急行電鉄株式会社 ニュースリリース「2018年春、田園都市線に新型車両『2020系』を導入します 更なる快適性と安全性を追求し、沿線の街や駅と調和した車両を目指します」、2017年3月17日

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