東急2000系は、1992年から1993年にかけて田園都市線と新玉川線(当時)の増発を目的として3編成が製造されました。東武線直通非対応車(サークルK)として限定的な運用に就きながらも田園都市線の希少種として長らく活躍していましたが、2020系の導入に伴って2017年から2019年にかけて機器更新・大井町線転用工事が施工され、9020系に改番されたうえで現在では3編成すべてが大井町線で活躍しています。この2000系の機器更新および大井町線への転用に際しては不可解な動きが少なからず見られ、その一部は今なお理由が明らかになっていません。本稿では3回に分けて、2000系の大井町線への転用と機器更新工事について考察を交えつつ解説していきます。
第一回となる今回は、機器更新の概要と、2015年から2016年頃にかけて大井町線転用が示唆された2つの事例について解説していきます。
<連載状況>
東急2000系の機器更新と大井町線転用-①概要と初期の噂(本記事)
東急2000系の機器更新と大井町線転用-②2003Fへの機器更新施工
東急2000系の機器更新と大井町線転用-③9020系化と大井町線転属完了
東急2000系の大井町線転用・機器更新の概要
まずは、2000系の大井町線転用と機器更新の概要を整理していきます。2000系は田園都市線時代は10両編成で6M4Tの組成を組んでおり、すべてのデハが2両で1ユニットを組んでいました。一方大井町線への転用に際しては、5両編成で3M2Tの組成を組むことになり、1編成あたりユニットM車2両、単独M車1両を組み込むことになりました。ここで、2000系に先頭電動車・単独M車が存在せず、単独M車への改造を含む電装系の大掛かりな改造工事が必要になったことが、単なる編成短縮に留まらず機器更新を伴う大規模改造に繋がった一つの理由と考えられます。
2000系と同様の事例として、先頭電動車の存在しなかった東横線向け1000系は、池上線・多摩川線への転用にあたって先頭車の電装が必要になり、結果として機器更新を伴う大規模改造が施工され、番号も1500番台に改められました。対して、東横線から大井町線へと転用された9000系は全てのデハが単独M車であったため、編成短縮など最低限の改造のみで転用されました。
効率的に更新工事を進める目的からか、種車は以下のように選定されました。
- 2001F~2003Fのクハ(両先頭車)はすべて転用
- 2002Fのデハのうち3両は、単独M車へ改造
- 2003Fの6両のデハは、ユニットM車のまま転用
このような改造を行った結果、大井町線転用後はすべての編成が①2003F中間車から改造されたユニットM車2両と②2002F中間車から改造された単独M車1両を各編成の両先頭車で挟む形態となり、単純な編成短縮とは異なる形で転用が行われました。これは過去の東急保有車両の中でも稀有な事例として特筆されます。余剰となったサハ2両×3編成分、2002Fのデハ3両、2001Fのデハ6両は全て廃車解体処分となりました。
大井町線への転用に関する2つの噂
実際に2000系の大井町線転用に伴う一連の工事が開始されたのは2017年からですが、実は2015年頃から大井町線への転用を伺わせる根拠がいくつか存在していました。
大井町線への転用に関する噂①:幻の甲種輸送
まず、鉄道ダイヤ情報2015年6月号(交通新聞社)に東急2000系の逗子行きの甲種輸送予定が掲載されましたが、その後すぐに設定取消しとなっています。掲載された内容としては、2015年6月10日に長津田→八王子、翌11日に八王子→逗子への甲種輸送の予定となっていました。
この甲種輸送では、大井町線転用を見据えた5両での甲種輸送・並びに総合車両製作所横浜事業所での機器更新が計画されていた可能性が考えられます。長津田駅発着の甲種輸送においては、長津田駅の東急・JR間の授受線の有効長の関係で7両以上の車両は分割して2日間に分けて輸送されます。掲載された予定では長津田からの輸送は1日程しか組まれていなかったことから、少なくとも6両以下の甲種輸送が計画されていたことになり、大井町線転用工事に向けた甲種輸送が計画されていた可能性が高いと思われます。
ただ、設定取消しとなった後もこの甲種輸送に関する情報は私の知る限り全く公になっていないため、真相は闇の中です。
東急2000系甲種はウヤ情になってましたとさ。 pic.twitter.com/2kVLcFST1d
— 路地 (@Logiura_jp) May 19, 2015
大井町線への転用に関する噂②:室内灯LED化
次に、2016年5月頃より2000系の室内灯LED化が順次実施されましたが、必ずしも全車両の室内灯がLED化されていなかったことから、大井町線への転用を見越したものなのではないかという予想が広まりました。特に、室内灯LED化の対象となった車両の数が計15両であること、クハが全て室内灯LED化されていること、サハが全て室内灯LED化の対象から外れていたことなどから、近いうち5両編成化のうえ大井町線へ転用されることが見込まれる状況でした。
なお、具体的な室内灯LED化の状況は以下の通りでした。
- 2001F:両先頭車のみ
- 2002F:1・3・6・9・10号車のみ(両先頭車+パンタ付き電動車3両)
- 2003F:4・7号車以外(両先頭車+電動車6両、つまりサハ以外全車両)
これら室内灯LED化の対象となった車両は実際に大井町線へ転用された車両と一致しており、大方の予想を裏付ける形となりました。
2000系で室内灯がLED化されてるのは
2001F:両先頭車
2002F:両先頭車とパンタ付き電動車
2003F:サハ以外全車
それぞれの編成の先頭車の間に、2002Fの電動車を1両と2003Fの電動車1ユニット(2両)を組み込む形で5連を組成と予想。— ひだま (@tumari2311) March 25, 2018
今回のまとめ
田園都市線でサークルK車として人気を集めた2000系でしたが、その大井町線への転用と機器更新の計画は実は2015年頃より存在していました。特に室内灯LED化の状況が明らかになったのちはその計画の存在が公然と語られつつも、実際に大井町線へ転属するまでには3年近くもの時間が空きます。次回は、機器更新1本目として出場した2003Fの動向について解説していきます。
参考文献
- 鉄道ダイヤ情報2015年6月号(交通新聞社)、2015年5月15日
- 鉄道ファン2018年6月号(交友社)、2018年5月21日
コメント
東急2000系は9020系となり、その後サステナ車両としての譲渡が決まるなど、面白い車歴になりそうです。2000系時代の車歴についての振り返りは非常に重要な気がします。
1点補足です。
>翌11日に八王子→逗子への甲種輸送の予定
こちらは長津田→逗子の甲種輸送予定で、
2015/06/10,11の2回に分けて八王子へ、06/12にまとめて逗子へ輸送する予定だったとみられます。
むしろ7両以上で計画されていたことになります。
(確か10両で入場予定だったと記憶しています)
記載の通り真相は闇の中となってしまいましたが、
背景の1つに、5000系の6扉車置き換え(予備減が1年半ほど続く)があったのではとみています。
実際、それが終わりそうな段階で2003Fの機器更新が始まったこともあり。
当時の記憶を思い出しながら、興味深く読ませていただきました。
[…] 東急2000系の機器更新と大井町線転用-①概要と初期の噂 東急2000系の機器更新と大井町線転用-②2003Fへの機器更新施工 […]