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GV-E197系の外観とキャンバーの話

車両技術
積車状態のGV-E197系

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JR東日本が新製したGV-E197系ですが、砕石運搬車GV-E196形の車体歪み(積車時)が話題になっているようです。鉄道車両に必要な柔らかさと、意図的に歪ませる工程、静荷重試験について簡単に触れます。

車体を柔らかく作る理由

鉄道車両は軌道への追従性が問われてきますので、ねじれやすく作ることが必須です。枕ばねで吸収できる変位は、速い動き(周波数の高い成分)が主で、ゆっくりした動きは車体が吸収している実態があります。新形状の鋼体で静荷重試験を行う理由の一つとして、このような背景があります。具体的試験内容はJIS E 7105をご確認ください。

JISE7105:2011 鉄道車両-旅客車用構体-荷重試験方法
この規格は,主として,電車,内燃動車,客車などの旅客車用構体の強度,剛性などを確認する場合の静荷重試験(以下,試験という。)の方法について規定する。

こうなると、(ねじれやすく、反りにくい設計には限界があるので)どうしても積載する荷重で車体が歪むことになります。

車体を意図的に歪ませる工程

鉄道車両は製造時に、キャンバーと呼ばれる、車体を歪ませる工程があります。国内の鉄道車両の大半は、車体中央が高く、車体両端が低い、凸型に反るような加工をしています。乗車人員が増えても、この反った部分が戻ったり、凹型になるだけで、大きな歪みを避けることができます。

WO2014054137A1 - キャンバー付車両構体及びキャンバー付車両構体の製造方法 - Google Patents
 キャンバーを容易につけることができる車両構造及びその製造方法を提供する。 台枠(301)の長さ寸法s1と屋根構体(321)の長さ寸法s2は、キャンバーにあわせて、s2の方が長くなるよう寸法差を設ける。一方で、側出入り口(371)、(372)、(373)は、すべて、上部と下部の開口寸法が同一となるよう構成す...

編成写真で遠くのほうを見ると、乗車人員の少ない車両は凸型になっていることが分かると思います。気のせいではなく、本当に車体を凸型に作っているのです。

この工程、図面としては示しにくい、かなりの熟練作業で、なかなか自動化が難しいと聞きます。

GV-E196形が目立つ理由

GV-E196形、ホッパー支柱と車体を、各箇所ボルト2本だけで締結していることからも、ねじれやすくする(ねじり剛性を落とす)よう腐心していることが伺えます。とはいえ、側面から見ると、やはりホッパー体で拘束されている部分が残り、ホッパー両端の歪みが強調されるため、見た目が悪くなるのではと思います。

見た目はともかくとして、強度としては静荷重試験をパスしているはずで、心配する話では無さそうです。

奥付

GV-E197系(積車)の写真は 八ミツ/八トタ推し さんにご提供頂きました。ありがとうございます。

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