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関東大手民鉄の事業用車・牽引車の更新状況

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車両動向
牽引車として新車輸送等で活躍する西武101系263F
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近年、JR東日本では機関車に代わる事業用牽引車が登場し動向が注目されていますが、民鉄にも事業用車や牽引車が存在します。本稿では関東大手民鉄8社の事業用車・牽引車の車歴を簡単に振り返ります。

1.はじめに

本稿では関東大手民鉄8社(東武・西武・京成・京王・小田急・東急・京急・相鉄)が2023年現在使用している事業用途の車両を中心に、車歴の概要をガントチャート形式の表にまとめます。
各社の使用状況から、本稿では大きく2種類に分類しています。

①事業用車
営業運転に使用することを考慮していない事業用の鉄道車両。過去、営業運転に就いていた車両が運用から離脱あるいは改造を受けた場合もこちらに分類しています。電車を対象として、機関車等は含みません。東武・京王・小田急・東急・京急・相鉄が該当します。

②営業車兼用牽引車(動力車)
平時は営業運転に就き、必要に応じて車両輸送の牽引車や検測車の動力車になり得る鉄道車両。西武・京成・小田急が該当します。

2.事業用車・牽引車の状況

2.1 事業用車の状況

事業用車の状況を下表に示します。

各社の中で最も車歴が古いのは東武8000系8506Fで、新製から58年を迎えようとしています。次点で車歴が古いのが相鉄です。営業車両としての新製から今年で40年、事業用車化からも17年を迎えます。次いで古いのは当初から事業用車として新製された京急です。小田急の検測車クヤ31形は今年20年目で、中堅といえます。
近年、事業用車を新製したのは京王と東急です。京王は1990年代から10年強のスパンで営業車両を事業用車へ改造していましたが、2015年に新製しました。東急も元営業車両の事業用車を15年程度使用した後、2012年に新製しました。

2.2 営業車兼用牽引車の状況

営業車兼用牽引車の状況を下表に示します。

車歴が古いのは西武で、種車の新製から40年以上が経過、牽引車改造からも15年を迎えました。京成も新製から30年以上が経過しています。小田急は2021年頃に特異な動きがあったため、2023年時点で現存していない動力車も記載しています。

2.3 考察

近年新製した京王と東急を除いた6社は、事業用車・牽引車の車齢が(種車時代から通算して)30年以上経過していることが窺えます。今後、次期事業用車・牽引車など何らかの動きが出てくるとみられますが、牽引車需要により対応が分かれることが予想されます。

事業用車・牽引車需要がこの先持続するか不透明とみられるのは東武・京成・小田急です。
東武では、本線・東上線間の車両輸送で秩父鉄道ATSを装備している8506Fが使用されていますが、近年は8000系以外の車両は秩父鉄道所属の電気機関車による牽引となっており、使用頻度が低下しています。同編成は直近で検査を受けていますが、新車輸送を保有するディーゼル機関車で行う事例も出てきており、この先、電車型の牽引車を残す意義は低下しているといえます。
京成の場合、新形式1本目は牽引車による回送が行われている一方、それ以外の新車は総合車両製作所横浜事業所からの自力回送となっています。牽引車需要は極めて限られており、こちらも不透明な情勢と捉えられます。
小田急は、クヤ31形の動力車用途以外の牽引車需要を一般車の短編成で賄った事例もあり、必ずしも専用の編成を欲する状況ではないと考えられます。加えて、今年6月には小田急線全線を対象として線路設備モニタリング装置を導入・運用することを発表しており、今後、検測方法の見直しでクヤ31形および動力車の需要自体が消滅する展開も想定されます。

一方、西武や相鉄は東急と同様に新車輸送や車両入替に伴う牽引車需要が年数回程度発生し続けるとみられます。
西武の場合、支線において短編成の営業車両需要もあり、営業車両に牽引車機能を付加することに一定の合理性があります。抜本的な使用方法の見直しが無い限り、営業車兼用の牽引車を欲する状況にあるとみられます。
相鉄は、現状の車両運用では営業車両における短編成の需要がありません。牽引車機能を有する車両を残す場合、現状通り事業用の短編成車両を持ちたいと考えられます。
京急は定期的に車両基地間で資材輸送を行うなど、事業用車需要が高いです。事業形態を変えない限り、営業車両とは別に事業用車を保有することに合理性が残るといえます。

3.おわりに

本稿では関東大手民鉄8社の事業用途の機能を持つ車両の略歴に着目しまとめました。2010年代に新製した京王・東急以外6社の車両は車齢が高く、今後の動向が注目される時期に差し掛かっているといえます。本稿では網羅的な考察に留まりましたが、継続的に各社の車両動向や経営施策を注視することが今後を占う一助になると考えます。
◇◇
本稿の執筆にあたり、限られた時間の中で多くの文献を参照するように努めていますが、転記ミス等誤りがあるかもしれません。お気づきの点やフィードバックがございましたら本稿のコメント欄にお寄せください。
※本稿各画像の二次利用はご遠慮ください。また、さらなる創作(動画制作等)をなさる場合、お示しした各参考文献を参照していただくことを強くお勧めいたします。

参考文献

*1:鉄道事業者公式資料(報道発表資料、年譜、会社要覧、安全報告書、広報誌等)
*2:電気車研究会「鉄道ピクトリアル」各号
*3:ジェー・アール・アール「私鉄車両編成表」各号
*4:日本鉄道技術協会「JREA」各号

コメント

  1. 小田急8000形置き換え用新車は6000形でしょうか。(管理修正済み)

  2. 東武10030型のアーバンパークライン向けの50番台は、リニューアルをしてほしいです。(管理修正済み)

  3. 一点だけ
    東急8506Fは1975年(昭和50年)3月落成です
    そもそも8000系列の新製初年は1969年(昭和44年)ですので、1965年(昭和40年)当時はまだ影も形もありません

    • あーごめんなさい、「東武」だったんですね
      大変失礼しました

  4. 京成も電気/軌道試験車所有の計画が有りました(RP2007/3臨時増刊号に計画が記載)が、その後の変化でCancelされ、京成は事業用車を現在は所有して居ません。

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