J-TREC横浜事業所でE233系トタT71編成が姿を見せました。中央快速線の予備編成数は5本ですが、今年度以降「入場以外の予備」が2.4本から1本へ急減することが見込まれます。現況と対策をまとめたいと思います。
予備編成は元々2本
201系の置き換え以来、2015年5月にトタH59編成が登場(青編成から編入)するまで、中央快速線の予備編成数は2本でした。
首都圏全体で見ても、配置が約60編成で予備を2編成として回している線区は三鷹車両センターくらいで、この予備編成数/編成数だと車体保全が不可能(車体保全時期に予備車を増やすことが必須)になり、入場検査の大半で新系列検修棟が必要となります。2009年1月には、車両不足(1編成入場・2編成故障)で朝通帯に運休が発生したことがあります。
グリーン車組み込み準備改造に伴う予備編成の増加
2015年5月にトタH59編成が増えてから、予備編成数は3本となりました。ここで注意したいのが、G車組み込み準備改造が延期されたことです。2015年度末時点で、2016年度に東京総合車両センターで「G車組み込み準備工事」が始まる予定でした。なので、私は、予備編成を3本にしたかったのか、結果的に3本になったのか、と言えば、後者の可能性が高いと見ています。
その後、車体保全が始まったことでトタH59編成も必要な車両となり、2018年度に209系1000番台2編成が転入し、予備編成数は5本となりました。3編成がG車組み込み準備改造の予備、2編成がその他の予備ですが、厳密に言えば、G車組み込み準備改造の予備編成のうち10%程度は車体保全による入場予備を兼ねているような現状となっています。
2019年度の入場以外の予備は2.4本
2019年度、予備編成5本をどう使ったのかを積算すれば、「入場以外の予備」が算出できます。
(年度で区切るにあたって、トタh27~H44編成を1年間で施工したG車組み込み準備改造としています。また、話を簡単にするため、指定保全は一律14日間、車体保全は一律30日間とし、改造と検査を兼ねている編成は、差分を改造による日数としています。トタT40編成の車体保全を含めて計算をしています。)
事由 | 年間延べ日数 | 編成数 |
---|---|---|
指定保全 | 150日 | 0.4本 |
車体保全 | 240日 | 0.7本 |
G車組み込み準備改造 | 540日 | 1.5本 |
入場以外の予備 | 890日 | 2.4本 |
入場予備は5-2.4=2.6本必要だったことになります。「入場以外の予備」が非常に重要な数字で、この2.4本(延べ890日)で、車輪削正や臨時修繕、故障調査、走行距離調整など、全ての車両繰りを行っています。配置区所としては、この数字が増えれば楽に、減れば大変になります。
2020年~2023年度の入場以外の予備は?
豊田車両センターの日車キロ(1日1編成の平均走行距離)は550キロ程度で、定期検査の必要回数は概算できます。この4年間で約40編成の車体・装置保全、約40編成の指定保全、約50編成のグリーン車組み込み準備改造を進めなくてはいけません。1年あたりに平均した予備編成の使途は下記の通りです。
(厳密には、そもそもグリーン車の組込みと準備改造が並行して可能なのかどうかという問題があり、更にタイトになる恐れがあります。また、装置保全、指定保全を新系列検修棟で行えば、短縮が見込めますが、前者は改造と併施できず全体を見た時の効果が見込めないこと、後者は短縮幅が小さく影響が軽微であることから、考慮していません。)
事由 | 年間延べ日数 | 編成数 |
---|---|---|
指定保全 | 140日 | 0.4本 |
車体・装置保全 | 300日 | 0.8本 |
G車組み込み準備改造 | 1020日 | 2.8本 |
入場以外の予備 | 370日 | 1本 |
単純計算で、入場予備は5-1=4本に激増してしまいます。「入場以外の予備」は1本(延べ370日)に急減してしまうことが分かります。仮に予備編成を更に1本追加すれば「入場以外の予備」は2本(延べ730日)となり、2019年度とさほど変わらない数字となります。
対策をどうするのか
2019年度は「入場以外の予備」を2.4本とした体制でしたが、この体制とG車組み込み準備改造の両立は、今年度以降、困難になる現実が見えます。「入場以外の予備」を1本に抑え込む、グリーン車組み込み準備改造の工期を削減する、1編成予備編成を追加する、などの対策が思い浮かびます。
なお、一般論として「入場以外の予備」を2.4本持つのは贅沢ですが、設備の特状や予備品、要員の配置などにも左右されますので、外から見積もるのは困難な印象です。
そんな中で、トタT71編成が目撃されたことになります。
(参考)武蔵野線の編成数について
常磐快速線の機器更新が終了し、予備編成が浮いていることから、1編成を常磐快速線から転属させて、武蔵野線の予備編成数を3編成から2編成に削減すれば、車両の不足は発生しません。
首都圏の主要な通勤線区では予備2編成が一般的になっていますが、これは先述の通り、工場への入場期間の短縮と密接にリンクしており、新系列検修棟の枠が空かない限り困難という見方もあります。
この辺の見積もりには、そもそも武蔵野線の車両をどこで検査するのか、検査工程は205系時代よりどの程度短縮されるのか、工程短縮で予備は減らせるのか、という複数の段階があるので、予備削減については予測が難しいのではと思います。