名古屋鉄道が公開した2024年度の設備投資計画から、今年度以降増備される9500系・9100系は、先頭部が連結時に常時通り抜けが可能な貫通扉を備える構造に設計変更されることが分かりました。
「昨今の鉄道車両内での異常事態発生を受けて、避難誘導の円滑化を図る」ことが理由とされていますが、省令との兼ね合いがあったものなのか、或いは名鉄独自の判断によるものなのか気になるところです。
また、大半の既存車両が併結運転時に通り抜けができない状況ですが、車両の非貫通解消を進める動きはあるのでしょうか。
名鉄9100系・9500系 貫通タイプ導入
名古屋鉄道は2024年度の設備投資計画を公表しました。今年度から避難誘導の円滑化を図るため、9100系及び9500系が連結時に常時通り抜けができる前面貫通扉を備える構造に変更されます。9100系は2編成、9500系は3編成導入予定です。Li
コメント
すぐに併結運転列車の貫通割合を増加させるのは間違いなく困難だと思いますが、極力今後は通り抜け可能設計の車両を本線に導入し続け、本線を走行する老朽車両は勿論、支線を走行する老朽車両も本線非貫通車両の転用で置き換える、という流れにするかもしれません。
三河線の6000系置き換え用でしょうか。
鉄道車両の構造については「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」並びに「鉄道に関する技術上の基準を定める省令等の解釈基準」によって定められていますが、現在の貫通口、貫通路の設置数に関する基準では地下鉄等旅客車(1.5km以上の地下トンネルまたは2km以上の山岳トンネルを走行する車両)以外では編成全体を貫通させることは求められておらず、また地下鉄等旅客車に関しても下記の条件を満たす場合は貫通路を1ヶ所のみ(編成間の通り抜けができない状態)とすることが容認されている状態となっています。
・連結された列車ごとに、それぞれ非常の場合に旅客を誘導して退避させるための係員(以下保安係員)が乗務する場合。
・連結された列車のいずれかに保安係員を乗務させるとともに、当該旅客列車を組成する全ての車両の非常通報装置に旅客と保安係員との間で通話できる機能を設けた場合。
このことから、名鉄に限らず各社で見られる非貫通編成の廃止については基本的に現状ではまだ省令に基づかない自主的な動きに止まっているものと思われます。
一方で、名鉄の場合、3編成以上での併結や一部特別車編成に対する増結車等、乗務員が不在となる編成が発生する場面が多々あり、現状地下鉄直通車以外は省令上問題ないものの、昨今の事案を踏まえた場合にこれらが保安上の懸念点として容認しがたいものとなりつつあることが今回の件から窺えそうです。
名古屋鉄道は将来的に中編成ワンマン運転を実施したい意向があるのでしょう。遅まきながら車両面でその実施に障壁があると認識し、以後貫通路付きにします というだけの話だと思われます。