大手事業者から中小事業者などへよく行われる車両の譲渡。
譲渡先となる地方私鉄は狭軌である場合が多いですが、標準軌である営団地下鉄→東京メトロ(銀座線・丸ノ内線)や京阪電気鉄道など、および馬車軌である京王帝都電鉄→京王電鉄(京王線)から譲渡された車両には台車を新造したり、他の狭軌車両(高松琴平電気鉄道へ譲渡された元京王5000系は標準軌)の台車と組み合わせて譲渡先の線路幅に合わせるような改造を行った例があります。
近年も標準軌・第三軌条方式だった東京メトロ銀座線01系が台車を新造した上で熊本電鉄01形として譲渡された例がありますが、一方で多くの中小事業者で線路幅が同じ車両を譲受する例が圧倒的に多く、更には先述の京王から譲渡された元5000系も活躍する高松琴平電気鉄道・伊予鉄道・一畑電車では新造車両を導入する例も見られます。
果たして今後改軌を伴う車両譲渡が行われる事はあるのでしょうか?
コメント
改軌については各種寸法が一致する台車枠が存在すれば比較的容易ではあるものの、そのような台車を中古で調達するのはタイミングや伝手の面で容易ではなく、改造を前提とする場合であっても、台枠の、それも最も荷重のかかる部分に手を入れることになるため施工難度が高く、鋼製車体以外では対応可能なメーカーもほとんどないものと思われます。
また、台車ばかりに注目されがちですが、外形や取り付けの寸法がバックゲージに依存する主電動機も基本的には改軌と同時に使用できなくなりますから、それも新たに工面する必要があるという問題点もあります。
新製を前提とするのであればこれらの問題は発生しませんが、当然流用と比較してコストはかかりますし、そもそもの前提として容易に短編成を組成できるような機器構成の車両自体が少なくなっていますから、改軌を必要とする車両を選択するメリットはほとんどないと考えてよさそうです。
ただ、譲渡に限定しなければ直近でも西鉄7050形の貝塚線転用が計画されているとおり、車両自体の新製と比較してメリットが全くないわけではないことから、改軌を伴う転用が今後も行われる可能性自体はゼロとまでは言えなさそうです。
問題は地方私鉄が求める18m級車の供給源が大手私鉄だと標準軌がほとんどで1067ミリだと名鉄・南海(高野線の一部)くらいしか候補が無いところですね。
20m対応に施設を改めるか新車にするか改軌するかいずれにせよ高コストになりそうです。
名鉄に関しては車両長が18m級ではなく19m級なので、導入する時に支障が少なくなるにしても敬遠されやすいのかなと。
(最も名鉄は延命工事を行って自社で使い倒す傾向が強いですが…)
台車そのものは京王のような特殊軌間でない限り、例えばE217系や小田急8000形、南海6000系などの廃車発生品でなんとかなりそうですが、むしろ集電方式と電圧が問題となりそうですね。18m級ですと今後京急1500形の大量放出が見込まれますが、架線電圧は直流1500Vですので狭軌台車を調達できても600V線区では使えず、結局新調が必要となってしまいます。また、ことでんが比較的新しい東京メトロ02系が大量廃車を出したにも関わらず見送ったのも、軌間こそ合致しても集電方式と架線電圧(第三軌条とパンタグラフ、600Vと1500V)が合わなかったためと考えられます。
改軌に限らず中古台車への交換全般に言えることですが、実際にその台車を物理的に取り付けられるかどうかという点があまり考慮されることなく議論されているのは少々残念なところでしょうか…
たとえ同じ方式の台車であったとしても、心皿径やボルスタレス台車であれば空気バネのピッチなど、取り付けに関わる部分の寸法が一様ではないことは容易に想像できるのですが、そういった部分の実情がどのようになっているかがもう少しわかれば議論も深まるように思えるのですが…
台車支持方法が全く違うボルスタ付き台車からボルスタレス台車への換装すらいくつも事例がありますので、台車交換は改造としてはそれほど難易度が高くないのかなと推測しています。
少なくともボルスタレス台車への交換事例については基本的に台車枠を新製している事例が多く、中古台車への交換というのはあまり見かけない点は気になるところですね…
また、過去に京阪3000系(初代)の譲渡に際しては心皿周辺の構造が特殊で中古の台車探しに相当難儀したという話が残っているあたりからも、やはり中古での調達を前提とすると難易度が上がるのは確かかと思われます。
丸ノ内線02系も、都営浅草線5300系も、結局は全車解体に。
京急1500系も全車解体の見込みなので、地方私鉄の多くは車両更新がなかなかできずお先真っ暗です。
改軌の有無に限らない話ですが。
抵抗制御の時代と違いVVVF装置は場合により更新の必要があるため、ともすると先頭車化なども含む改造コストをかけて中古車を導入よりは補助金をもらって新車を導入する判断をする地方鉄道は増えるのではないかと思います。
また供給側の大手鉄道でもある程度で新車導入をして中古車を放出するより廃車まで使い倒す流れもあるように感じています。
車両譲渡そのものが無くなるとは思いませんが、大規模な改造、それも改軌を伴うようなものは今後かなり珍しいものになるのではないかと予想します。
台車を改軌する理由は狭軌1067mm対応車両で中小私鉄に適合した車体が中古車として出物がほぼなくなったがための観点で、種車が標準軌でその集電方式すらも変えてしまえば出物が無いと言い切れるわけではありません。
運営に何らかの形で行政が関与している鉄道事業者の場合は、他社からの中古車発生を期待せずとも新車を入れる傾向になりつつあります。まず中古車発生の情報が無い事には、そして自社の更新時期と合致するかが問題ですが、皆無になることはなく非常に稀なケースになると思われます。
個人的にはアルピコ交通21000系のような事例が成立したのは、先頭車化改造、車内案内設備の刷新、床下機器の大幅更新しかも中古品ではなくE129系などと同等レベルの機器といった魔改造級の内容で、非常に画期的であると思います。
個人的には輸送力を大幅に増強する必要がない中小鉄道事業者であっても、将来の選択肢の幅を持たせるために、計画的かつ段階的に車両限界の拡大を図る取り組みを持った方が有利だろうと思っております。