登場から52年と京成電鉄のみならず関東大手私鉄でも最古参になったものの、現在でも第一線で活躍の続く3500形。編成組み換えを容易にできることからも重宝されています。今回はそんな3500形の波瀾万丈であった車生についてご紹介しようと思います。
デビューから更新開始前まで
京成3500形は1972年に同社初のセミステンレス車体・冷房装置を搭載した通勤形車両としてデビューしました。製造メーカーは日本車輌製造・東急車輛製造(現総合車両製作所)・川崎重工業(現川崎車両)の3社です。登場時、前面は現在と大幅に異なる切妻顔で、カラーリングは現在3600形3688編成がリバイバルカラーとして纏っているものと同様の「ファイヤーオレンジ」でした。また、3516編成までに製造された車両は車番・社名プレートが青色でした。ちなみにステンレス車体となったのは冷房装置搭載により重量が重くなったからという逸話もあります。
車体設計は大幅に変わりましたが、システムは3500形以前の赤電各形式とほぼ同等のままであり、これが後々長寿となる原因にもなります。
1979年製の3576編成を最後に現在に至るまで川崎重工業(川崎車両)で京成の車両が製造されることは無くなりました。
3584編成の一部車両・3588編成は試作的にオールステンレス車体で製造され、後に最終増備車の3596編成・後継形式の3600形以降で本格採用されることになります。
その後は1992年に一部編成にて窓上の帯のみを青帯に試験的に変更されましたが本格採用はされず、1993年以降現在の京成一般車のカラーリングである赤帯と青帯の2色塗装に変更されました。
更新工事開始
セミステンレス車体は内部の骨組みのみ鋼製であるためその部分の腐食が進行していました。そこで車体の一部張り替えを含む大がかりな更新工事が1996年より開始されました。
更新工事により前面は全く異なるデザインとなり、側面の窓配置も変わったためぱっと見では同一車両とは思えないものとなりました。
車体は大幅に改造された一方、走行機器類は京急線乗り入れのため0.5M方式である先頭車の運転台側と妻面側の台車を入れ替え運転台側を電動台車化したことやブレーキ装置の変更など必要最低限のものとなりました。
(と言ってもVVVF化等よりは簡素ですが台車の入れ替えも相当なものに感じます)
また、内装も全面的に作り直され、車椅子スペースを各先頭車に設置すると言った時代のニーズに合わせた改造も行われた一方、ドア上の案内表示器は未設置、当時すでに時代遅れとなっていた扇風機に至っては従来の東芝製の物から当時最新の三菱製のものに変更されるなどしています。
(尤も冷房装置が扇風機併用前提のものでした)
更新工事中止と未更新車の廃車
この更新工事は大がかりだった故当然かなりの費用がかかりました。当初は全編成が更新される予定でしたが、内部の腐食が想定以上に進んでいたことから2001年をもって打ち切りとなり、1976年以降に製造された車両は新型車両の導入によって置き換えが行われることになりました。
その後、2003年に3000形がデビューすると3200形や3300形といった先輩の赤電形式が大量に残っているのにも関わらず、真っ先に3560編成が廃車となりました。後期車から廃車が始まったことにより多くが経年25〜30年程度で廃車になったことになります。
その後も廃車が進められましたが、中には6連の3300形が4連化されたことにより玉突きで廃車になるなど、事実上先輩形式に置き換えられた車両もありました。
2005年に運用離脱した3572編成は廃車となるまでの間ボルスタレス台車の試験に使用されました。その後は3700形3848編成に移設され最終的には新AE形で本格採用されました。
2008年を最後に京成では車両の置き換えをストップし、成田スカイアクセス線用のAE形・3050形の製造へシフト、その後車両の置き換えが再開した際も3300形の置き換えが進みました。この時点で未更新車は3576編成・3588編成・3592編成・3596編成の4本が残存していました。
2015年に3300形およびそのリース車の北総7260形が引退すると翌2016年から3500形の置き換えが再開、2月に3592編成・3596編成が、3月に3576編成が廃車となり未更新車は3588編成のみになりました。
そして2017年2月、最後まで残存した3588編成はラストラン団臨を行い引退、未更新車は全廃となりました。
2010年代の更新車の動き
未更新車の廃車が進む一方で更新車は優等列車や直通列車を含む第一線で活躍し、2両単位で編成組み換えをできる長所も生かしていました。
2013年には3600形3618編成に代わり本形式の3540編成が芝山鉄道へリースされています。
しかし2015年頃からは更新車にも暗雲が立ち込めます。3300形引退と時を同じくした2015年2月頃、所定での8連組成を解かれ、4・6連で普通列車や支線系統での活躍がメインとなりました。代走で突発的に8連を組むこともありましたが、遅くとも千葉ニュータウン鉄道9000形が引退した2017年3月以降は8連を組んだとしても京成線・芝山鉄道線のみでの運用となりました。これは北総線・都営浅草線・京急線にツーハンドルマスコン・電磁直通ブレーキ車が定期運用で入線しなくなったためだと思われます。
その後は京成線内でも8連を組成する回数が減り、現状では(定期運用外ですが)2020年に行われたツアー列車が最後になっています。
更新車の一部廃車
2018年に行われたダイヤ改正では4連の運用が必要最低限となり、余剰が発生しました。それにより3532編成が更新車初の廃車となってしまいました。
その後2021年には3520編成と3552編成の一部号車(3549 - 3550)が廃車となっています。これは北総7800形7818編成としてリースされていた3700形3748編成が脱線事故を起こし一部号車を廃車・6連化の上京成に返却されたことから余剰になったものと見られ、本来ならこの時点での廃車予定では無かったと思われます。余談ですが3700形3748編成は2022年11月に運用を離脱、同時期に脱線事故を起こした3788編成の被災車代わりに京成上野方2両を供出し、余った車両は3788編成事故車と共に廃車となってしまったためもどかしさを感じてしまいます。
近年の動きと今後の展開
2022年頃にはデジタル無線設置と半固定編成化、芝山鉄道所属車の緑帯化、4連で運用される編成のワンマン対応化など動きが多くありました。
京成電鉄では今年度から新型車両3200形を導入することが発表されました。設計コンセプトが3500形以前と同じ「編成組み換えができる車両」であることから経年も相まって本形式の淘汰を念頭にしているものと思われます。
機器流用車の初代AE形→3400形を除き京成電鉄で車齢50年を迎えたのは本形式初期車が現状唯一であり、4連であることが必須な金町線に入線できるのが本形式と3600形3668編成のみであることから重宝されたものと思われますが、3200形導入によりその歴史に幕を閉じようとしています。
コメント
京成では、最初は6両編成1本が3500形を3200形で置き換えでしょうか。
済みません。セミステンレス車としてなら最古参と言えるかも知れません。現時点で最古参と言える車輌は東武8000系8111 F(8711と8811を除く)だと思われます。1963年製造なので今年で61年余りになります。
当時としては余剰だっのでしょうが更新車10両の廃車は今となっては少しもったいなかった気がします。とはいえ、4両運転の拡大とワンマン化がされるなんて想定していなかったでしょうから仕方ないかもしれませんね。
5編成の配置に高砂2運用、宗吾2運用なので必ずどちらかが予備0になっている現状は京成としても軽く見ているものではないと思います。
もしこの10両を活用できていたら千葉・千原線のダイヤ、ましては中途半端になってしまっている千原ワンマンも違った形になっていたかもしれませんね。
京成の車両で川重兵庫製造は、多分この3500形だけですね。もともと川重と取引があったわけではなく、東京砂町に工場のあった汽車製造が川重に吸収合併されたことによる取引の移行で、関東のメーカーで無くなった以上、打ち切りは既定路線だったのかもしれません。
翻って新形式3200形、新3000形から続く日車ブロック工法→N-QUALISの採用と見受けられますので、日車は蕨から豊川に集約されて半世紀以上たっても、京成との縁は長く続くようです。東急車両→総合車両同様、地域性を重んじてのことでしょうか。
地域性を重んじるのであればj-trecが選ばれてそうなもんですが、不思議なもんです。