フランスの鉄道車両のビッグ3に数えられるアルストムは、総合車両製作所と2013年に、アルストムが展開する超低床電車LRV「シタディス」を日本に参入させることで覚書を締結して10年が超えますが、実際に導入には至っていません。
国内の路面電車メーカーは、近畿車輛・三菱重工業・東洋電機製造の「JTRAM」、旧アルナ工機の系譜をもつ阪急阪神HD子会社・アルナ車両の「リトルダンサー」、旧新潟鐵工所の系譜を持つIHI子会社・新潟トランシスの「ブレーメン形」に分けられます。
JTRAMは広島電鉄にしか納入できておらず、新潟トランシスは宇都宮ライトレールに納入以降は案件がない一方で、アルナ車両は毎年一定数の車両を納入しています。しかしながら、アルナ車両は阪急正雀工場の敷地内で製造しており、宇都宮ライトレールのように約1年間で17編成を納入するような製造能力は持ち合わせていないと考えられます。
路面電車の多い地方都市の過疎化が進む中で、宇都宮ライトレールは当初計画を上回るなど「活況」を見せており、那覇市や岐阜市をはじめとした一部の都市ではLRTの導入を望む声が高まっています。
総合車両製作所が、LRV車両を製造することはあるのでしょうか。
(注1) 新潟トランシスは、12月に中小企業再生ファンド「ジェイ・ウィル・パートナーズ(JWP)」が運営するファンドに売却予定(IHIグループから離脱)。
(注2) ブレーメン形を開発した独アドトランツは事業をボンバルディアに売却し、2021年にはアルストムに売却している。

総合車両製作所と仏アルストム、日本のLRT市場参入に向け覚書締結 | レスポンス(Response.jp)
JR東日本グループの鉄道車両メーカー・総合車両製作所とフランス・アルストムグループの交通事業子会社であるアルストム・トランスポールは6月19日、軽量軌道交通(LRT)に関する覚書を締結した。



コメント
ブレーメン形は外国型あるあるで部品供給の面で難が指摘されているようですね。
(熊本で早期廃車になりましたし)
アルストム型も同様の危惧で避けられているのではないでしょうか。
JTRAMは売れてないというより、発注ロットの小さい案件を取らない姿勢なのでは?
アルナは標準モデルを用意して各事業者向けに若干のカスタマイズで対応する事で、小ロットでも手間がかからないようにしているように見受けられます。
(トランシスのNDCシリーズみたいに)
実績の無い総合車両製作所が案件取るには、何処かに格安で少数の車両導入してもらって、実績作りと日本国内での運用に関するノウハウ獲得が第一でしょうか?
その後、一般鉄道車両製造の実績と、アルストムというブランドで差別化で勝負ですかね。
当時燻っていた、静岡市のLRT構想に備えての対応だったと思っています。
静岡清水線との直通と同線の超低床化を前提としていたので、東急と近しい静鉄への納入のためにライセンス締結したのではと思います。
うまみが少ないから受注しないのかと思います。
J-TRECの製造ライン設備は構体、ぎ装、台車ともLRVに向いていません。車体は小さく他の一般車体と同時にラインに流すと構体組立作業場で効率が悪いです。台車は低床ゆえの特殊構造で、ロボット化した製造工程を使用しづらい。高圧機器が屋根上ぎ装で、これまたいつも製造している車両と異なる。この点は欧州車両もそうですが。
一般的な18~20m車両の製造に適切な設備なため、LRV製造は作業効率が悪く恒常的に流れる製品の見込みが立ち設備投資をしない限り利益率が良くないのでしょう。
原価積み上げで定価を決める場合、艤装品メーカーは発注数の多いアルナ車両に比較的有利な見積もりを出すでしょうし、競合他社より人件費も安いアルナ車両が有利です。
かつ、アルナ車両はグループ内取引を除けば専業で、値引きをしても仕事を取りたい一方で、他社には路面電車製造に値引きしてまで受注する旨味がありません。
路面電車を運営する企業体も、公営なら入札、民営でもあえて高い値段のところを選ぶ余裕がある企業体は少ないでしょう。
総合車両製作所が、JR東日本からの発注激減を受けて、そこにも手を伸ばす可能性があるかどうか、でしょうか。
アルナ車両は生産ラインが小さいと言う
問題が有るけど
阪急の正雀工場を借りている状況で
正直アルナだけでは賄えないと思えます
大量発注に不向き
全て職人による手作業で製造しているから
特に連接車辺りは構造上製作に時間が掛かるそうで
その為札幌市電は構造上シンプルな単車の1100形シリウスを入れたり※現在は生産ラインに余裕が出て来た事から連接車のA1210形ポラリスⅡを導入している 長崎電気軌道は新たに開発された単車のタイプNを導入に切り替えたりしています。
今後アルナは長崎電気軌道 熊本市電 筑豊電鉄 札幌市電 阪堺電車 とさでん交通 函館市電の発注が予想されます
何かあるとしたら東急世田谷線でしょうね。
東急300系は製造が1999年と国内路面電車としては古くはなく置き換えもまだ先だと思われます。
しかしアルストムが国内に参入するなら、「路線全ての車両を自社で統一できる」事ができそうな事業主と、サポートの仲介役になる強力な車両製造企業とがセットになり得る世田谷線に、日本参入第一号としての商機を見出した可能性は高いと思われます。
全長20m級通勤電車の製造に特化しているので路面電車型の製造には向かない、のはJ-TREC新津だけであって、J-TREC横浜は江ノ電500形も製造したように柔軟な製造体制が残っているはずです。
>「路線全ての車両を自社で統一できる」事ができそうな事業主と、サポートの仲介役になる強力な車両製造企業とがセットになり得る世田谷線
ひとつだけ問題があるとすれば、世田谷線では超低床車両は必要ないという点でしょうか。
これは都営にも言えることで、例に挙げられている江ノ電同様の、(車輪径と軸距は小さいですが)通常の2軸ボギー台車を使えて車室内にも張り出してこないので、車体側の制約は軌道用車両に求められる衝突安全性以外は特にないんですよね。
ホームはその床面に合わせて全停留場が客車ホーム並みに嵩上げされており、機器艤装面でも超低床車両より明確に有利な以上、わざわざ新たに設備側の対応工事をしてまで超低床車両に移行することはないと思いますよ。
J-TREC(総合車両製作所)が今後LRV(超低床路面電車)を製造する可能性については、「現時点では低いが、潜在的には十分あり得る」というのが妥当な見方だと思います。2013年にアルストムと「シタディス」導入に関する覚書を結んだことは確かですが、あれから10年以上が経っても国内での納入実績はなく、実際には構想段階のまま止まっている状況です。
J-TRECはJR東日本グループの車両メーカーで、主力は新幹線や通勤型・近郊型の「サスティナ」シリーズといった鉄道車両です。年間数百両単位の製造能力を持つ大手メーカーではありますが、LRT用の超低床車両は構造や設計思想がまったく異なるため、新たな投資や技術開発が必要になります。現時点では、JR東日本の事業領域との親和性も高くなく、会社として優先順位が低いと考えられます。
一方で、国内のLRT市場を見渡すと、宇都宮ライトレールを除けば大規模案件はまだ限られています。アルナ車両のリトルダンサーや新潟トランシスのブレーメン形など、既存メーカーが一定の実績を積んでいるため、発注側としてもリスクを取って新参メーカーを採用する動機は弱いのが実情でしょう。ただし、アルナは小規模生産が中心で、新潟トランシスは組織再編中でもあり、もし那覇や岐阜といった都市で宇都宮クラスのLRT計画が動き出せば、供給能力の面でJ-TRECのような大手の参入余地が生まれる可能性があります。
その場合、J-TRECが独自に車両を開発するよりも、アルストム「シタディス」を国内仕様にアレンジしてライセンス生産する形が現実的だと思われます。既に関係を持っていることもあり、需要がまとまれば技術導入のハードルはそれほど高くないでしょう。また、地方のJR線区を都市交通と直通させる「トラムトレイン構想」が本格化すれば、JR東日本系列のJ-TRECが製造を担う可能性も十分に考えられます。
要するに、今すぐ動く見通しは薄いものの、需要と案件規模が整えば、J-TRECがアルストムと再び連携してLRT市場に入ってくる可能性はあるということです。現状では静観モードですが、「第二の宇都宮」が現れたときには一気に動くかもしれませんね。
>需要がまとまれば
ここが一番の課題ですね
国内のLRT整備はLRV価格の高止まりで足踏みし、そのせいでLRV需要が生まれず国内にLRV供給体制が整わない。
結局いつまで経ってもLRV価格が下がらない、というデッドロックに陥っています。
新設LRT路線だけでなく、既存の路面電車路線の車両まで一括調達するような枠組みを国が旗振り・支援していかないと、「需要と案件規模が整」うことは永遠にないのではないかと悲観的に見ております。